2008年03月16日

4.正直な仕事【本当に大切な50のこと】






私の夫、マットが10歳くらいのときだった。
毎週土曜日の午後
彼の祖父は家族で営んでいるさくらんぼ畑にマットを連れて行くようになった。

大人たちにまじって彼は働いた。
売り物のさくらんぼを食べてないことを知らせるため
わざわざ口笛を吹きながら。

一日中働いてもらえた額はたったの50セント。
もしホットドックとジュースを買ってもらったら
そのおこずかいもチャラだった。

十代の若者を、彼の父は朝食のテーブルから呼びつける。
「あと2分で支度しろ!」

マットは反抗することはなかった。
太陽が東から顔をのぞかせる前に
彼は着替えと朝食を済ませ
熊手で落ち葉を集め
土を耕すのであった。


この話を聞いて私はぞっとした。
かわいそうに。
彼の失われた子ども時代を思い
そしてのんびりアニメを見ながら
シリアルをむしゃむしゃ食べていた自分の土曜日の朝は
なんてすばらしかったのだろうと思った。


しかし、私は結婚後、彼が驚くほど手際の良いことに気がついた。
私がのろのろと皿洗いをしている間に
彼はさっさと身支度をすませてしまうのだ。

どんな仕事も彼は集中し、てきぱきとこなした。
彼は完璧にその仕事に入れ込んで、上手に早く仕事を終らせた。

それは彼が「誠実な仕事」の楽しみを学んできたからであった。

排水溝の掃除であろうが
報告書を書くことであろうが
どんな機会であっても
彼はそれを自身の表現の場として大切にした。

彼が心をこめて作ったスパゲッティーのソースは
「俺が家族においしいものを食べさせてやるぞ」と言い
草取りがきちんとすんだ庭は
「地球とのつながりはなんてすばらしいんだ」と言う。
何をするにつけても
彼は幸せのカギを見せてくれるのだった。


マットの教訓:
全ての仕事は
―そこが農場であれ、工場の中であれ、
コンピュータの前であれ―
正直で自身を満たすものになりうる。
もしもその仕事に真に身を捧げられたなら



彼が教えてくれたように
正直な仕事とは社会、そして世界への貢献であり
我々の魂が向かう方向の表れなのだ。

ちょうど木々が空気をきれいにし
日影を作り
果実の恵みを注いでくれるように
私たちにもやるべき仕事がある。
そして一つずつ、未来へ積み上げていくのだ。

それがレンガであったり
肥料だったり
データベースであったり
さくらんぼパイであったり。
  


2008年03月14日

1.知恵【本当に大切な50のこと】






大学を卒業した後、将来何をするかで悩んだ2年間、
私はコロラドのボールダーという町でバーテンダーをしていた。
コロラドの冬は長い。
そんな中、レストランの外で演奏していた年老いたサックス奏者と友達になった。

ユージーン・“ラッキー”・ハドソン
彼は安酒場で演奏しながら、スーツケース一つでアメリカ中を旅する、
放浪の75年間の人生を歩んできたという。
ラッキーは午後になると、
バーカウンターを拭きながら話す私の愚痴を聞いてくれた。

同僚への不満、休日出勤の嘆き、友人とのいさかいで受けた心の傷・・・
その日の愚痴がどんなに馬鹿げていても、面白みがなくても、
ラッキーは体全体で聞いてくれた。
うなずき、相槌をつき、目を閉じ、舌打ちをしたり、腹を弾ませて笑ったりしながら。

私の愚痴が一段落すると、彼は手の甲でビールのついた髭を拭い
大きな茶色の目で私を見つめてこう言った。
「ある人の話をしてあげよう・・・」
そして話し始めるのであった。

アラバマの農場で働く話や
サンフランシスコのジャズクラブで遊びまわる話。
私の悩みと一体何の関係があるのか、分からなかった。
その時の私は
彼の話の全体ではなく「特定の一部分」しか見ていなかったから。

あれから少しばかり成長した今ならわかる。
彼の言葉の裏には、いつだって現実的で明白なメッセージが示してあったのだ。


思い出すのは、1939年の大干ばつや尾びれの付いたキャデラックの輝きの話ではない。
彼の低くなめらかな声がこう私に語りかける。

「あんたの母さんは愛されたいだけなんだ。
考えるな。
ただそうしてやるがいい」

「許す瞬間、人は神になれる。
例え許すことがいつも良いことではないにしても」

まるで農家が種をまくように、
彼がなんの気なしに私に投げかけたレッスン。
完璧で無慈悲なまでの明白さを持って、今私の心に迫ってくる。

その種が根をはり
あの頃と同じくらいはっきりとした声で
私は 今、 彼の「知恵」を聞いている。
  


2008年03月13日

【本当に大切な50のこと】はじめに





本当に大切なものの定義

広い家、高級車、ダイアのブレスレット。
デジタルTV、優雅な休日、スパ付のリゾート。

私たちはこういった「豊かさの象徴」に囲まれて生きています。
そしてそれらがないと
気が滅入ったり、置いてけぼりを食ったような気がしたり
もしかしたら「自分は価値がない」と思い込み、意気消沈したりするかもしれません。


なぜでしょう。


それらのものは人生における本当に大切なものではないのです。
少なくとも、長い目で見れば。


一番大切なものは、身の回りにありふれていて
誰もが感じることができるシンプルな喜び。

良き人であるための明白な価値観。

強い優しい力で私たちの魂を満たしてくれる
友人や家族との心の絆です。


この本には、人生で本当に大切な50のモノたちがつまっています。


おいしいコーヒーを飲みながら談笑すること
ハグの大切さ
シンプルな生活を送るための勇気
ストリートミュージシャンの言葉の中の知恵
キャンドルの明かりを見つめる平和、安らぎ


これらの話たちがあなたを勇気付け
道を示し
魂を満たしますように。

そして何より
人生の本当の価値を知るヒントを与えられますように。


幸せというのは結局
手で触ることのできる「モノ」の中にあるのではなく
自分自身の中にあります。

そして、それを見つけるために
心の目をしっかりと開きましょう。
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